日本の鉄路について考える

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なぜ中央特快は吉祥寺を通過するのか(後編)

前回は「なぜ中央特快は吉祥寺を通過するのか(前編)」と題して中央快速線の種別についてまとめてみました。

southsnows.hatenablog.com

今回は本題の吉祥寺に中央特快が停車しないのかを見ていきたいと思います。

 

中央快速線駅別利用者数ランキング(1日平均乗車人員)

1位:新宿 769,000人

2位:東京 440,000人

3位:立川 166,000人

4位:中野 146,000人

5位:吉祥寺 142,000人

6位:国分寺 112,000人

7位:御茶ノ水 105,000人

8位:神田 101,000人

9位:三鷹 96,000人

10位:四ツ谷 95,000人

中央快速線利用者のみではなく他路線利用者も含む

 

ランキング1,2位は世界一利用者の多い駅新宿と東京の玄関口である東京駅が入ってきます。そして3位には多摩地区で今一番大きい都市となった立川駅が入ります。10年程前までは吉祥寺駅の方が利用者数が多かったのですが、近年の立川周辺の発展により立川駅にその座を譲ることになりました。4位に中央特快の停車駅である中野駅、5位に今回の主役である吉祥寺駅がランクインしています。

 

ちなみに、ランキング中の駅名が太文字になっている駅は東京23区外に駅が位置しており、赤文字は中央特快が停車しない駅です。

このことから分かることが、中央特快が停車しない駅で唯一吉祥寺駅はトップ10にランクインしているということです。23区外にある駅ではトップの座を立川駅に譲りましたが、それでも23区外だと2位につけており、これだけみると吉祥寺に中央特快を停車させていてもおかしくないと考えるでしょう。しかし、現実では中央特快は停車せず通過していきます。ということで、その理由をいくつか考察してみました。

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近代的な駅舎が特徴的な吉祥寺駅 特快が止まらない駅の中では最も利用客が多い ※画像:Wikipedia

 

京王井の頭線への利用者流出を防止している

吉祥寺駅はJR中央快速線緩行線(地下鉄東西線直通も含む)と京王井の頭線が乗り入れる駅です。京王井の頭線は吉祥寺~渋谷間を結ぶ路線で、途中の明大前駅では京王本線に乗り換えることが出来る利便性の高い路線です。

すなわち京王井の頭線中央快速線にとって、吉祥寺以西から渋谷方面への利用者を巡りライバル関係にある路線と言えるのです。

立川~渋谷までJRのみ(新宿経由)で行くと550円かかりますが、吉祥寺で京王井の頭線に乗り換えると411円になるので140円程安くなります。所要時間はJRのみの方が中央特快を利用すれば5分程早いものの、5分しか変わらず140円高いとなれば多くの旅客が京王井の頭線経由で利用すると考えられます。

従って、中央特快を吉祥寺に停車させると利用客がライバル路線である京王に流れてしまうため、あえて通過させて自社線を利用してもらうようにしているということです。

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吉祥寺から渋谷を結ぶ京王井の頭線 JR線とのライバル路線である ※画像:Yahoo不動産

 

②多摩地区対都心利用の遠近分離

吉祥寺駅は23区外にある駅ではあるものの、一つ隣の西荻窪駅からは23区内の駅となります。すなわち多摩地区の中でも23区にほど近い場所に位置する駅になるのです。もし中央特快が当駅に停車すると、三鷹、吉祥寺と連続停車することになり所要時間も伸び、速達性が悪くなります。また、吉祥寺に停車すると吉祥寺からの利用客が中央特快を利用することが出来るようになり、後続の快速と特快の混雑率に大きな差が生じることになります。また、特快と快速は隣の三鷹駅で接続を取っており、特快のすぐ後を追うように快速列車が三鷹駅を出発します。もし特快が吉祥寺に停車すると、電車が団子状態になり、後続の快速がノロノロ運転をせざる負えなくなるといった問題もあります。

これはJR側からすると良いことではないので快速と特快の混雑率の平準化列車間隔を維持するためにあえて吉祥寺を通過させているのです。

吉祥寺から都心へ向かう場合は快速で15分弱(新宿~吉祥寺間)あれば到着してしまう距離です。すなわち「吉祥寺から都心へは特快を使わなくてもそこまで時間はかからないから快速をご利用ください」というこということなのです。

 

③中央特快は隣の三鷹駅に停車する

 だったら三鷹を通過して吉祥寺に特快を止めればいいのではないかと思われる方もいるかもしれません。しかし駅の構造上、三鷹駅に特快を止めた方が利便性が向上するのです。

まず吉祥寺駅の構造は2面4線の高架駅であり、そのうち1面2線を中央快速線、残りの1面2線を中央緩行線が使用しています。すなわち、中央快速線が使用できる線路は上り下りで1本ずつであり、当駅で接続や追い越し等は出来ません。

一方で三鷹駅の構造は3面6線の地上駅であり、そのうちの2面4線は中央快速線のホームに割り当てられています。すなわち、上り下り共に1面2線を使用することが出来るので、当駅で退避や接続を取ることが可能なのです。これにより、快速から特快への乗り換え及びその逆もスムーズに行うことができ、利便性が確保されるのです。

 

以上の理由から中央特快は吉祥寺を通過します。このように利用者数のみで速達種別の停車駅が決まっていないケースはほかにも存在します。鉄道会社も利益が出なければ列車を走らせられませんので、利害関係も裏で大きく関わってきます。こういった背景が分かると面白く見えてくるのではないでしょうか。

JR東日本「えきねっと」