JR北海道管内にて発生した脱線事故から考える鉄道貨物の安全性(下)
2024年11月16日に発生したJR北海道管内の貨物列車脱線事故の追加発表が11月18日になされました。
その内容は想像以上のもので、破損したレールは本来15ミリある部分が腐食によって3ミリにまで薄くなっていたということでした。鉄道の安全について再度考えさせられることになったと実感しています。
今回は同内容を踏まえたうえでの考察をしていきたいと思います。
※(上)編は以下の以下のリンクよりお読みいただけます
今回の予想以上の腐食が発生した理由についてはいくつか考えられると思います。
一つ目は降雪です。北海道は降雪が多く線路にも雪がたまりやすくなります。そうすると目視での点検などの障害となり得ると考えられます。また、融雪時に雪解け水が鉄の腐食を早めることも推察できます。今回は踏切にあたる線路が破損したとのことで、踏切板などの設置物があったことも、早期発見の妨げになったと思います。
二つ目は塩害です。同区間は海が近い立地のため、海風によって海水の塩分が線路に付着しやすい環境にあったと思われます。これが鉄の腐食を早めたのではないかと考えられます。
三つ目は特急列車及び、貨物列車の重量による負担です。同区間は特急北斗が通過する区間であり、普通列車よりも性能の高い列車が通過します。また、2011年の不祥事が明るみになる以前は特急列車の130km/h運転や振り子式列車の走行など、線路にかかる負担が現在よりも大きかった期間が存在します。ただし、森駅は特急列車の停車駅であることから、最高速度で同区間を日常的に走行することは少ないように思われますので、この影響は少ないかもしれません。
それ以上に影響があるのは、貨物列車の重量によるものだと考えられます。多くのコンテナ荷物を積載し、長編成で走行する貨物列車は旅客列車に比べて重量が重くなります。その分通過時に線路にかける負担は大きくなりますので、今回の事故においても貨物列車の通過時の負担に耐え切れず破損したものではないかと推定されます。
貨物列車が日常的に通過する区間については保線コストが大きくなることが一般的ですが、経営状況の厳しいJR北海道がどこまで対応することができるのか疑問が残ります。
北海道はただでさえ除雪による保線コストがかかる路線が多く、列車本数が少ないことから、営業列車とは別に除雪車を走らせる必要があります。
この事故以前から「当社単独では老朽土木構造物の更新を含め、安全な鉄道サービスを維持するための費用を確保できない線区」が10路線13区間もあることを公表しています。今回の事故を受けて更に保線コストが増大する事態となれば、無理して維持するのではなく廃止してしまうといった動きが加速してしまう恐れもあり、今後の鉄道事業に大きな影響を与えかねません。JR北海道の線区は旅客輸送よりも貨物輸送の重要度が高い区間もあるため、一企業に丸投げするスタイルには限界があるのではないかと思います。
北海道の鉄路は大きな分岐点にあり、今後の対応次第では鉄道網が大きく縮小するといった可能性もあることから、続報に注目したいと思います。