日本の鉄路について考える

日本の鉄道についての記事を中心に紹介します

リニア中央新幹線が開通したら

リニア中央新幹線JR東海が令和9年に開業を予定(品川~名古屋間)している一大プロジェクト路線であり、今現在も工事が着々と進めれています。

リニア新幹線中央新幹線といった愛称でも知られている同新幹線が開通したら、日本の鉄道はどのような変化が起こるのか考察してみたいと思います。

 

まず初めにリニア中央新幹線がどういったルートで敷設予定であるか確認してみます。

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経路は異なるものの東海道新幹線と競合する形になる

 このようにリニア中央新幹線は品川駅(東京都)を起点に名古屋駅(愛知県)までをほぼ一直線に結ぶ計画であることが分かります。

今現在は東海道新幹線の再速達列車である「のぞみ号」が品川~名古屋間を約1時間30分程度で結んでいますが、同新幹線が開通すると同区間を約40分で走破する予定です。最高速度が500㎞/hと現行の新幹線の1.5倍近くのスピードで走破するとあって所要時間も桁違いに早くなります。

名古屋~新大阪間は現行ののぞみ号で約50分程度となっておりますので、リニア中央新幹線が名古屋まで開通した際には名古屋駅での乗り換え時分を考慮しても1時間40分程で東京と大阪が結ばれることになると考えられます。

ではリニア中央新幹線が開通した際にどのような変化がもたらされるかいくつか考察していきたいと思います。

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山梨県内にある実験線を走行するリニア 営業運転では500㎞/hでの運転が計画されている

 東海道新幹線がこだま号中心の運行形態になる

現在の東海道新幹線は再速達列車であるのぞみ号の運行本数が圧倒的に多く、ひかり号こだま号の運行本数は毎時2本程度と少なく、のぞみ号の停車しない静岡県内からの利用は不便なものになっています。しかしリニア中央新幹線が開通すると東京と名阪間の速達輸送の役割がリニア中央新幹線へ移行されると考えられます。そうすると現行ののぞみ号への需要が少なくなり、ダイヤにも余裕が生まれます。その結果、各駅停車タイプのこだま号の増発及び、途中駅での退避回数の減少により所要時間の短縮が図られると考えています。

 

橋本駅周辺の利便性の向上

東海道新幹線の神奈川県内の駅は新横浜駅(西部には小田原駅もある)ですが、リニア中央新幹線橋本駅付近に駅が設置される予定です。東海道新幹線が開通した当初、新横浜駅周辺には何もなく、新幹線開通後に発展した駅です。こういった経緯を踏まえると橋本駅周辺も大きく発展する可能性があると考えています。その大きな理由としては、

  1. リニア中央新幹線を使用すれば都内までの利便性が飛躍的向上する
  2. 現在走っている京王相模原線横浜線の利便性が向上し結果的に新宿や横浜方面へのアクセスも向上する

といったものが挙げられます。

 

品川~橋本間の所要時間は現行ですと迂回したルートになってしまうため、1時間以上かかっています。しかしリニア中央新幹線を利用すると10分程度で結ばれると考えられます。これは山梨県内にある実験線(約40㎞)を10分程度で走破している実績から考えています。

 
また橋本駅には京王電鉄京王相模原線JR東日本横浜線が乗り入れています。新宿駅からリニア中央新幹線を利用する場合、品川駅(20分)、橋本駅(40分)の両駅へ向かうことになると考えられます(カッコ内は新宿駅からの所要時間)。そうした場合相模原線直通の特急列車の設定や、増発などのダイヤ改正が行われる可能性が大きいと思います。また、横浜線も橋本止まりの列車が設定されていますが、東京多摩地域からの利用が増加することで全区間通しで運転する列車が増えると予想しています。
 
③対航空機シェアの向上及びエリアの拡大
新幹線の所要時間が4時間を超えると利用客が航空機に流れる、これを「4時間の壁」と呼んでいます。実際に、東京~広島(約3時間45分)での新幹線対航空機は56:44と新幹線の方がシェアが高く、東京~博多(約4時間50分)での新幹線対航空機は8:92と圧倒的に航空機の利用が多くなっています。
一般的に航空機の方が鉄道よりスピードが速いのですが、空港までのアクセスや、搭乗手続きがあるために早めに空港で待機しないといけないなどのロスがあります。こういった時間を考慮すると鉄道の所要時間が4時間までであれば鉄道を利用する旅客が多い、これが4時間の壁なのです。
ちなみに東京~広島の対航空機のシェアが高いのも、広島空港が広島市街から不便な場所にあるといった空港立地面での影響が関係していると考えられます。
 
リニア中央新幹線が開通すれば東京~広島は約3時間、東京~博多約4時間で結ばれることになり、対航空機のシェアが大きく改善されると期待しています。
すなわち、リニア中央新幹線が開通すると、必然的に山陽新幹線の利用者数が増加するといえるでしょう。
 
東海道新幹線のバックアップ的存在
輸送人員の多い区間を走行している東海道新幹線。繁忙期には2~3分おきに列車が走行していることでも有名です。その東海道新幹線が台風や降雪などのトラブルで運転を見合わせた時の混乱や影響はとてつもなく大きいものです。
また、東海道新幹線は太平洋側を走行しており、発生が懸念されている南海トラフ巨大地震などが起きた場合には甚大な被害を受けることが心配されています。
ただしリニア中央新幹線が開通すると経路は違うものの東京と名古屋を結ぶ路線と役割はとても近い路線です。すなわち、東海道新幹線が何らかの影響で運転不能になったとしてもリニア中央新幹線がその役割を引き受けることができるのです。
これについては役割が重複する路線を建設するということで賛否両論がある部分でもあります。

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東海道新幹線は太平洋に近いところを走行しており地震や台風などの自然災害へのリスクが高い
今回は4つの観点でまとめてみましたが、この他にもリニア中央新幹線の開通によって様々な変化が起こるでしょう。そしてリニア中央新幹線が大阪まで延伸開業した際には日本の交通網に与える影響は更に大きくなり、東京から大阪まで通勤する事も夢ではないと思います。
国内の人口が減少していくなか、経営が難しくなっていくであろう鉄道。この先も日本の交通の要として活躍していくことを切に願っています。