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多摩都市モノレールの箱根ヶ崎延伸について

現在上北台駅多摩センター駅間が開業し、多摩地域を南北に結ぶ役割を担っている多摩都市モノレール。当路線に延伸予定があることを皆様はご存知でしょうか?

今回はその中でも開業に現実味を帯びてきた箱根ヶ崎延伸とその他の延伸計画についてご紹介させていただきます。

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車両は4両編成でワンマン運転である ※画像:武蔵村山市

多摩都市モノレールの歴史

多摩都市モノレール多摩地域の南北輸送を目的とした路線であり、南端の多摩センター駅(東京都多摩市)と北端の上北台駅(東京都東大和市)間が運行されています。

また多摩都市モノレールは東京都や沿線自治体、沿線鉄道事業者を中心に出資、設立された第三セクター路線の一つです。

1998年11月に立川北~上北台間、2000年1月に多摩センター~立川北間が開業し現在の姿となっています。

利用者数は年々増加傾向にあり、営業損益は2005年に黒字に転換しその後も拡大を続けています。しかし、土地取得費や建設費が資本金に対して莫大であったことから経常損益の黒字化には至っておらず初期投資に伴う返済が経営を圧迫し債務超過に陥ることになりました。この事態を受けて2008年には東京都などから追加出資や借入金返済期間の延長などの経営支援を受けることになり、「東京都の負の遺産」とまでいわれる有様でした。これには工期の遅れや総工費が当初予想の2倍に膨れ上がったこと、初期費用が通常よりも多くかかっていたことが原因とされています。

しかし、この経営支援を受けた後は経常損益、当期純損益共に黒字に転換され黒字経営が継続されています。

 

多摩都市モノレールの現在

当路線の沿線には大学等の教育施設が多くあり、学生の通学利用の拡大や、立飛駅前に開業した「ららぽーと立川立飛」や立川駅周辺の商業施設の拡充により、当路線の利用需要は年々増加しています。

開業当初の1日平均乗車人員は9万人強だったのが14万人強(2017年度)にまで増加しており約15年の間に5万人程度増加した計算になります。

これにより収支の改善が進み2015年度には当期純利益10億円を突破しました。

 

その他イベント列車として「ビール列車」や「ワイン列車」などの運行や、沿線施設の入園券等とセットになった企画乗車券のような切符の販売も数多く行われています。

代表的なものとしては、ららぽーと立川立飛セット券、多摩動物公園セット券、国営昭和記念公園セット券などが販売されています。

 

列車は全列車が4両編成であり、ワンマン運転を実施しています。ダイヤは概ね10分間隔で運行されていますが、朝夕ラッシュ時は7分間隔程度になります。それでも通学時間帯は混雑が激しく、分散乗車のお願いが出るほどです。

 

多摩都市モノレール箱根ヶ崎延伸とその他の計画

まずはじめに多摩都市モノレール延伸計画について確認していきます。

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上北台~箱根ヶ崎間の延伸は実現が近く、その他にも町田や八王子方面への延伸計画も存在する ※画像:武蔵村山市

 上図のように、多摩都市モノレール延伸計画にはいくつかの計画が存在しています。

上北台~箱根ヶ崎

多摩センター~町田間

多摩センター~八王子間

今回はこの3つの計画についてみていきたいと思います。

※この他にも是政まで延伸する案や、羽村や小宮、日野を経由し現行路線と繋げて環状線にする案もあるようですがこちらが実現する可能性はかなり低そうです。

 ①上北台~箱根ヶ崎

 この区間の延伸は導入区間となる新青梅街道の道路幅拡張に向けて用地の取得や拡張工事が行われており、場所によっては延伸工事が開始できる段階に入ってきています。

これを受け2016年には「導入空間となりうる道路整備が進んでおり、事業化に向けて関係地方自治体・鉄道事業者等において具体的な調整を進めるべき」とされ、東京都では基金を設立し事業化へ向けて動き出しています。ちなみに、この区間の工建設費は800億円と試算されています。

区間はモノレールの導入空間が確保されつつあり着工開始は秒読み段階に入っているところです。延伸開業によってこれまで鉄道路線が通っていない武蔵村山市に鉄道が開通し、当市の利便性の向上や、八高線の途中駅である箱根ヶ崎駅周辺の流動に変化があるものと思われます。

 

②多摩センター~町田間

この区間も一部で導入空間の確保に向けて道路の拡張や用地確保が行われていますが、上北台~箱根ヶ崎間程は進んでいません。

そのため2016年現在、「導入空間となりうる道路整備が前提となる為、その進捗を見極めつつ、事業化に向けて関係地方自治体・鉄道事業者等において具体的な調整を進めるべき」とされています。ちなみに、この区間の建設費は1700億円と試算されています。

この区間鉄道空白地域をカバーしつつ需要の大きい町田駅までを結ぶ路線ですので、開業すれば人の流れが大きく変わることは間違いないでしょう。

 

③多摩センター~八王子間

この路線は多摩センター駅から西進し、唐木田、南大沢、京王片倉を経由して八王子へ至る路線として計画されています。

しかし、延伸に向けた導入空間の確保等が進んでおらず、開業までには長い年月が必要となりそうです。そのため2016年には八王子市単独でLRT(次世代型路面電車)の導入が検討されましたが、勾配等の問題があり技術的な問題が多いことから導入は事実上見送られています。

この区間は2016年現在、「事業性に課題がある為、関係地方自治体・鉄道事業者等において、事業計画について十分な検討が行われることを期待」という程度になっています。もし延伸が実現した場合の建設費は1900億円と試算されています。

このように、多摩都市モノレール延伸計画はいくつか存在しており、どれも開業すれば利便性の向上につながることは間違いありません。しかし工費の問題や採算性等の検討も必要になってきます。

上北台~箱根ヶ崎間については着工まで秒読み段階に入っており、ほぼ100%建設されると考えていますが、その他の計画については多摩センター~町田間については期待が持てるもののそれ以外の計画は実現はだいぶ先もしくは厳しいと考えています。

この先多摩都市モノレールの延伸によって多摩地域の交通網がどのように変化していくのか楽しみです。