日本の鉄路について考える

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相鉄線の相互直通運転開始から見る「相直」のメリットとデメリット

2019年11月30日、相模鉄道(通称相鉄線)はJR東日本相互直通運転を開始することが発表されています。

整備区間相鉄本線西谷駅JR東海道貨物線羽沢横浜国大駅付近(約2.7km)であり、この区間が開業することによって今までは横浜駅経由での改札外乗り換えが必要だった相鉄線とJR線が繋がることになります。

開業後は相鉄線の海老名・湘南台駅から西谷駅、羽沢横浜国大駅(新線内)を経由して横須賀線と合流、その後武蔵小杉駅、大崎へと乗り入れ、埼京線方面への直通がが検討されています。

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連絡新線は路線長たった2.7kmの路線ではあるが利便性が飛躍的に向上する

これにより、海老名発川越行きといった面白い行先の列車が設定されるかもしれません。また、横浜駅を経由しないといけない対都心への所要時間短縮効果はかなり大きいもので、相鉄線二俣川駅からJR新宿駅までは現状約1時間かかっていますが、これが約45分と15分程度の短縮が見込まれています。

また2022年度末には東急東横線東急目黒線との相互直通運転も控えており、相鉄線を取り巻く環境は大きな変貌を遂げようとしています。

 

途中駅での乗り換えをせずに様々な場所へ行くことのできる相互直通運転、この相直のメリットとデメリットについて考察していきたいと思います。

 

相互直通運転のメリット

・途中駅での乗り換えが不要になる

・所要時間の短縮や心理面でも時短効果がある

・時短効果や利便性の向上による利用客数の増加

 

このように、通勤通学利用の旅客からすると日々の通勤通学にかかる時間が短縮されるので、利便性の向上により大きな恩恵を受けることが出来ます。また乗り換えがなくなるだけでも心理的な時短効果は想像よりも大きく、これまでは他の交通機関を利用していた旅客の流入や需要の拡大により、鉄道利用者数が増加すると思われます。

この実例としては東急東横線みなとみらい線東京メトロ副都心線東武東上線西武池袋線5社直通によって、埼玉県内から横浜までの娯楽需要の拡大があります。

 

相互直通運転のデメリット

・ダイヤ乱れや運転見合わせが起きた際に影響が広範囲かつ長時間にわたる

・様々な行先の列車が到着するので不慣れな旅客には分かりにくい

・これまで始発駅を利用していた旅客は着席することがになる

 

逆に、ダイヤ乱れや運転見合わせが発生した際に影響が広範囲にわたって起こり、なおかつ長期化する傾向にあります。この実例として挙げられるのが先程と同じく、東急東横線みなとみらい線東京メトロ副都心線東武東上線西武池袋線5社直通です。東武東上線は人身事故の多い線区、東京メトロ副都心線は混雑が激しく、小竹向原駅西武池袋線東京メトロ有楽町線が乗り入れる為、どこかの線区で遅延が生じると影響が多岐にわたります。また、東急東横線も混雑が激しい線区であり、ダイヤが過密な為、みなとみらい線の終点である元町・中華街駅での折り返しや、東横線内折り返し列車(渋谷止まり)は全体的に余裕がなく、遅延が生じると折り返し列車にも遅延が引き継がれてしまいます。

 

このように様々な特徴を持った路線同士が直通運転をすることによって、朝夕ラッシュの遅延の日常化や、運転見合わせ時の影響が全く関係のなさそうな線区にまで及ぶといったデメリットが表面化しています。簡単にまとめると、埼玉県の山間部で起きたトラブルが横浜の中華街を走る路線にまで影響を及ぼすことがあるのです。

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5社直通の路線図 便利な反面影響が広範囲にわたるのも想像に難くない

また、旅行客や普段鉄道を利用しない人にとっては、様々な行先の列車がやってくると戸惑うでしょう。私は関東圏に小さい頃から住んでおり、鉄道が好きなので様々な行先の列車が来るのは楽しいと思ってしまいますが、関西圏に旅行に行った際には〇〇快速といった種別が数種類もありどれに乗っていいのか分からないことがありました。首都圏の鉄道は関西圏よりも複雑な為、不慣れな旅客からすると一概に便利とは言えないのかもしれません(もちろん慣れれば便利なのは間違いない)。

 

これは少数派の話になるかもしれませんが、始発駅から利用していた旅客は直通運転により、利用駅が途中駅になってしまうので、着席することが難しくなるといったことが挙げられます。これは東急東横線の渋谷駅や、上野東京ラインが開通したJR東日本東海道新幹線の東京駅、宇都宮線高崎線上野駅が該当します。

これらの駅の利用者からすると「ラッシュ時でも数本待てば必ず座ることができたのに、それが出来なくなったので逆に不便だ」といった声もあるそうです。

 

以上のように相互直通運転には大きなメリットもある反面、デメリットも存在します。これまでの相互直通運転のデメリットを踏まえ、鉄道会社は相互直通運転の導入を進めていく必要があると思います。