日本の鉄路について考える

日本の鉄道についての記事を中心に紹介します

五日市線減便から見えてくる首都圏鉄道網の今後

東京の郊外を走る五日市線拝島駅から武蔵五日市駅までを結ぶ約11kmの短い路線です。全線単線ではありますが、電化されており中央快速線でおなじみのE233系が使用されています。朝夕には拝島から青梅線中央快速線に直通し東京駅まで乗り入れる列車もあります。

2015年のダイヤ改正以前は日中の時間帯でも1時間に3本の間隔で列車が設定されており20分毎に列車がやってくるようなダイヤになっていました。それが2015年のダイヤ改正後は日中の時間帯に減便が実施され、1時間に2本の間隔となってしまいました。

20分と30分、両者の差は10分ではありますが、心理的にはこの差は大きいと思います。20分間隔であれば駅での待ち時間は長くても15分程度であり、ダイヤを気にせず駅へ向かうことも出来る感覚でしたが、30分間隔になると最悪の場合30分近くも駅で待つ恐れがあります。減便された当時は、「東京から1時間30分程度で乗車できる五日市線が地方ローカル線のような立ち位置である」ということに驚きを隠せませんでした。

f:id:southsnows:20190921215057j:plain

緑の中を駆け抜けるE233系 ここも東京都の一部である ※画像:鉄道ホビダス

①沿線は車社会である

東京は公共交通機関が発達しており、自家用車がなくても不自由なく生活できるというイメージが浸透しています。実際東京23区内や吉祥寺駅を有する武蔵野市多摩地域の中心である立川市などでも公共交通機関が発達しており便利になっています。

しかし、五日市線の沿線である、あきる野市やその先の桧原村青梅線の青梅~奥多摩間にあたる奥多摩町などは同じ東京都とは思えないほど緑が豊かな地域で、人口も少ない地域です。この地域では駅を中心に発展しているわけではなく、街道沿いなどが発展しているケースが多くあります。そういった背景から地元住民は車での移動がメインとなっており、東京では珍しく車社会となっています。それ故に、立川や都心方面への通勤需要はあるものの、日中の移動需要が少ない、これが五日市線の利用需要の低さにつながっていると考えらえます。

 

②通学利用者が減っている

近年は少子化が進み、沿線にある高校への通学利用が減少していることも挙げられます。どの高校でも学級数が減少したり、通学費用を抑えるために自転車通学する学生も多くなってきていることから、より一層の学生離れが進んでいると思われます。

また授業後や部活後に電車で帰宅しようとしても、30分間隔でしか列車が来ないとなるとどうしても不便さが際立ってしまいます。そうすると家族が車で迎えにきたり、自由の利く自転車を利用する学生が更に増加する恐れもあると思います。

 

多摩地域の存在感が低下している

近年では都心回帰の動きが出ており、多摩地域の人口が減少傾向にあります。

この減少傾向は多摩地域の中心を担っている、立川や八王子近辺でも見られており、全体的に多摩地域の存在感が低下している現状があります。

その後立川周辺の再開発などで持ち直している地域もあるものの、五日市線沿線のあきる野市桧原村青梅線末端区間奥多摩町などでは年々人口が減少しています。

この都心回帰の動きは今後も加速することが予想され、五日市線沿線自治体では過疎化などの問題に直面する恐れがあります。そうなった場合、五日市線の利用者数も連動して減少することが予想されますので、今後データイムを中心に減便等の措置がなされるのではないでしょうか。

 

しかし、五日市線沿線には秋川渓谷などの観光スポットがあり、土休日にはホリデー快速が都心から直通で、1日に3本も運行されています。この列車は行楽客に好評であり、かなりの混雑をみせています。この観光需要をいかに活かせるかが今後のカギになると思います。平日は現状維持が限界だとしても、土休日は行楽客の取り込みよる需要の拡大が狙えると思います。

f:id:southsnows:20190921215321j:plain

201系「四季彩」 以前は観光用の列車が青梅線に存在していた ※画像:Wikipedia

青梅線に201系が走っていた時代には「四季彩」という観光向けに改造された201系列車が活躍していました。しかしE233系に置き換えられてからはそういった観光向けの列車がありません。そういった観光向けの列車を走らせることで話題となり、都心からもアクセスが良いことから利用の創出は地方のローカル鉄道と比較すれば可能性が大いにあります。今後の五日市線の未来は多摩地域の未来を反映すると思われますので、今後の動向に注目していきたいところです。