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中央線特急の新たな着席サービスについて

中央線特急のあずさ号、かいじ号の使用車両がE257系、E351系からE353系に置き換えられたことにより、2019年のダイヤ改正で中央線特急の着席サービスに大きな変化が生まれました。それは自由席を廃止し全席指定席化(座席未指定券利用もあり)を行ったことです。今回はその着席サービスの変化を比較していきたいと思います。

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中央線特急の顔となったE353系 富士回遊号にも使用される ※画像:JR東日本

①自由席が廃止された

今回の改正で一番の変化はこの自由席の廃止です。これにより中央線特急の座席は全席指定化され、指定席特急券座席未指定券のどちらかを利用することになります。

指定席特急券と座席未指定券の値段に差はありませんから、繁忙期など満席でなければ座席指定券を購入するのがベストです。座席未指定券は名前の通り座席が指定されていませんから、どの列車にも乗車することができ、販売されていない座席を利用することが可能です。したがって、どの列車に乗るか決めていない場合や満席で立ったままでもいいから乗りたいといった場合には便利な一面もあります。

ここで座席未指定券って何なの?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんので簡単にまとめてみます。

座席未指定券とは列車や座席を指定して購入する指定席特急券とは異なり、列車や座る席を選択することができます。しかし座席に関しては指定席特急券で発売されている座席には着席できません。すなわち、途中駅からその座席の指定席特急券が売れている場合は途中駅からは座席の移動もしくは立ったまま利用することになります。

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座席ごとにランプが設置されており色によって座席の状況が分かるようになっている ※画像:JR東日本

このように座席の上部には座席ごとのランプが設置されており座席の発売状況によってランプの色が変わる仕組みになっています。緑色は指定席特急券が発売されている席であり、その座席の指定席特急券を持った旅客しか着席できません。黄色はまもなくすると指定席特急券が発売されている区間に入る座席ということで、この先の停車駅から指定席特急券を持った旅客が利用する予定になっている席です。赤色は空席となっている席なので座席の未指定券でも着席が可能ですが、この先の発売状況によってはランプの色が黄色緑色に変わる可能性があるので注意が必要です。どちらにせよ、その席の指定席特急券を持った旅客が乗車した際には席を譲ることになります。

 

 ②料金体制が変わった

具体的な料金を比較するとキリがないので詳細な金額は割愛させていただきますが、基本的には「自由席は値上げ、指定席は値下げ」というイメージです。ですので普段から指定席を利用していた場合は今回の改正で値下げになり、自由席を利用していた場合は値上げになったと感じる形です。ですので一概に値上がりしたわけではありません。これに付随してグリーン料金も全体的に値下げになっています。これにより短距離の自由席利用者が減少する為、長距離を利用する旅客にとっては席が確保しやすくなったというメリットもありそうです。

 

③車内で購入すると割高になる

 自由席があった頃は、車内で近距離利用の自由席特急券を買い求める乗客が多く、ラッシュ時間帯はライナー代わりに利用するサラリーマンの姿も目立ちました。

しかし、全席座席指定化後は車内で特急券を購入した場合、事前料金よりも260円割高になります。また座席指定は出来ず、「座席未指定券」の扱いになってしまいますので、全区間その席に着席できる保証はありません。

すなわち、車内で特急券を購入した場合は「料金が高く座席指定もできない」というデメリットしかありません。これは乗車前に事前購入することを促すための策であると思われます。

 

④企業側のメリット

この全席指定化はJR東日本にとってメリットがあるシステムとなっています。

一つ目は人件費の削減が出来る点です。自由席があった時には検札自由席特急券の車内での発売など、車掌の業務が多くありました。そのため、特急列車に乗務する車掌の人数も必要になります。それが全席指定化後は車内での特急券の発売数の減少や座席上のランプの点灯具合で席の売れ具合が分かる為、確認の手間が省けます。こうすることによって一特急列車あたりの人件費を抑えることが出来ます。

二つ目は不正乗車や特急料金の取り損ねの減少です。自由席の検札や特急券の発売には時間がかかります。また東京方では短距離利用が多く、次の停車駅まで10分~20分程度で到着してしまう場合もあります。そうすると特急券を持っていないのに乗車するといった不正乗車や払うつもりではあったけれど検札が来ないまま目的地に着いてしまい、結果的に特急料金の取り損ねになっていたケースもあったようです。それが全席指定化によって検札の効率化が図られてこういったケースは減少すると思われます。

 

今回は中央線特急の全席指定化について触れてきましたが、利用者の不満はどちらかというと停車駅の削減にあるようです。次回は中央線特急の停車駅の減少について考えていきたいと思います。</p