日本の鉄路について考える

日本の鉄道についての記事を中心に紹介します

札沼線の末端区間廃止から思うこと(前編)

JR北海道の路線の一つに札沼線という路線があります。札沼線は桑園(列車は札幌から運転される)~新十津川駅間を走行する路線で、路線長は76.5kmあります。この路線の沿線(主に桑園~北海道医療大学駅間)には高校や大学が数多く設置されているため、「学園都市線」という愛称が付けられています。

札沼線の歴史を簡単に説明させていただくと、札沼線は札幌~石狩沼田駅間を結ぶ路線でしたが、1972年に赤字83線の一つとして石狩沼田~新十津川駅間は廃止となり、現在の姿になっています。幌と石狩田を結ぶ路線という当時の名残で札沼線という名前が残っています。ただし近年は学園都市線という愛称を用いるのが一般的で札幌駅での放送などにも愛称である学園都市線が案内として使用されていますので、札幌駅で札沼線の乗り場を聞いてもピンと来ないケースもありそうです。

 今回は札沼線の簡単な路線紹介を前編、廃止区間の考察を後編としてまとめていきたいと思います。

 二つの顔を持つ札沼線

札沼線は路線の中で二つの顔を持っており、両者を比較すると同じ路線であることが不思議な程大きく性格が異なります。

 

①札幌・桑園駅北海道医療大学駅

この区間沿線に高校や大学の数が多く札幌のベットタウン化が進んだことで宅地開発がなされた区間となります。その為、朝夕のラッシュ時は通勤通学利用の需要が大きく、ラッシュ時は1時間に4本程度の電車が運転されています。また日中の時間帯でも20分に1本程度の割合で電車が運転されていますので利便性が高いエリアです。

この区間の大部分(八軒~あいの里教育大駅間)は複線であり、全区間で電化されているため、3,6両編成の電車が使用されています。八軒駅~札幌駅まで複線化されていないのは、札幌駅周辺が高架化された際に札沼線の存在感はほとんどなかった為(全線廃止されてもおかしくない状況であった)、専用の線路がなかったという背景があります。その後需要が大きく伸びた為、無理やり単線の線路が専用線路として設けられましたが、複線分の用地がなかったので単線のまま現在に至ります。

 

電車のほとんどが札幌駅からあいの里公園石狩当別北海道医療大学駅間で運転されていますが、1日1往復だけ千歳空港まで直通する快速エアポートが運転されています。

以前は札幌から新十津川方面まで直通する列車も設定されていましたが、この区間が電化開業した後消滅しており、途中駅での乗り換えが必須となっています。

f:id:southsnows:20190901100853j:plain

この区間は電化されており、利用者が多い為最長6両編成の電車が使用されている

北海道医療大学駅新十津川駅

札幌方面からこの区間札沼線で向かう場合、途中の石狩当別駅で乗り換えることになります。この区間は利用者が少なく、非電化区間になるので「キハ40系」という気動車が使用されています。列車の運行本数としては石狩当別浦臼間が5往復、石狩月形までが下りが2本、上りは1本、終点の新十津川駅まで走る列車は1往復と閑散としたダイヤです。

ちなみに石狩当別駅から新十津川駅へ向かう列車は7時45分発の1本ですので、この列車が新十津川行の最終列車であり、これを逃すと列車で新十津川駅へ向かうことは出来ません。

また石狩月形駅新十津川駅間は列車の行き違いが出来る設備がないため、一本の列車しか走行できない区間としても有名です。

 

札幌~北海道医療大学駅までは電車の本数も確保され、沿線人口も多い区間ですが、この区間は電車の本数が少なく、利用者も少ない為、2020年5月の運行をもって廃止が決定されています。

f:id:southsnows:20190901102850j:plain

新十津川駅に停車中のキハ40系 この風景が見られるのもあと半年ほどである

新十津川駅を発車するたった1本の電車は10時丁度に新十津川駅を出ます。この電車に乗っても、日帰りでこの駅に戻る列車はないので札沼線のみを利用する場合は日帰りで札幌方面へ行くことは出来ません。また時間帯的にも通勤通学利用が見込める時間帯でもないですので、この区間の役目は当分前に終わっていたのでしょう。

最近は廃止前のブームで鉄道ファンの方を中心に利用されているようですが、「地元住民の足」としてはほとんど機能していないことを実感します。

 

次回は北海道医療大学駅新十津川駅間の廃止について考えていきたいと思います。

 

※途中の写真はWikipediaの画像を使用しております。