日本の鉄路について考える

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中央快速線の朝ラッシュ対策の秘密

中央快速線は東京の玄関口である東京駅を起点に、副都心の中心地である新宿を経由し、高尾駅までを結ぶ路線です。この路線は都心と多摩地域を結ぶ重要な路線であり、朝夕のラッシュ時を中心にどの時間帯でも利用客の多い路線です。

このラッシュ時の輸送力を確保するために1時間に30本、すなわち2分に1本の間隔で列車を運行する離れ業を使っています。

今回はこの輸送力の確保を可能にしている中央快速線の秘密をご紹介させていただきます。

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ラッシュ時には1時間に4万人以上の利用がある中央快速線 これだけ大勢の乗客を輸送するのはそう簡単なことではない ※画像:Wikipedia

JR東日本「えきねっと」

①両面発着が行われる駅がある

通常、複線の路線には上り下りそれぞれ1本ずつ線路があり、それに対応してホームが設置されています。しかし中央快速線には、上り下りそれぞれに2本ずつの列車が停車できる駅(すなわち2面4線の駅)がいくつかあり、この駅が両面発着を可能にしており輸送力増強に一役買っています。その駅が国分寺三鷹中野新宿駅であり、日中は国分寺三鷹駅で特快と快速の退避にも利用されています。

そして近年行われた高架化により、国立武蔵小金井東小金井駅でも両面発着が可能になっています。

中央線の大きな駅はラッシュ時を中心に多くの乗客が乗り降りをする為、駅に1分程停車しないと乗客の乗降が間に合いません。しかし、2分間隔で列車を運行しようとすると、駅で1分停車している間に後続の列車が詰まってしまい、列車の渋滞が発生してしまいます(数珠つなぎとも呼ばれる)。すなわち駅に1分停車していくと、通常は2分間隔での運行は不可能に近いダイヤになります。

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中央快速線の路線図 都心と多摩地域を結ぶ重要な路線である ※画像:Wikipedia

 ②開閉する扉の工夫

中央快速線の大きな駅である国分寺三鷹、中野、新宿駅では両面発着が実施されるのと同時に、この4駅だけ見ると扉は左右順番に開くように設定されています。すなわち、国分寺で左側のドアが開けば、三鷹では右側、中野では左、新宿では右といった感じです。

一見あまり意味がないように思われるかもしれませんが、乗降の多い駅で扉が左右順番に開くと、一方のドア付近に乗客が溜まることを防ぎ、乗降をスムーズにする効果があります。

 

③遠近分離を目的とした列車の運行

中央快速線には朝ラッシュ時の上り列車に「通勤特快」という種別の列車を走らせています。この列車の特徴は「停車駅が極端に少ない」ということです。

高尾駅発の列車は八王子、立川、国分寺、新宿、四ツ谷御茶ノ水、神田、東京と停車していきます。

この列車は中央特快の停車駅である、三鷹と中野を通過するので、国分寺を出ると次は新宿まで止まりません。しかし所要時間を比べてみると、昼間の中央特快の方が所要時間は短くなります。それは通勤特快停車駅は少ないが速度が非常に遅いということです。というのも先行の列車を追い越せる駅は限られており2分間隔で走る列車にすぐ追い付いてしまうからです。

それでも通勤特快を運行しているのは、都心に近い駅(三鷹や中野)からの乗客は快速列車へ、多摩地域(八王子や立川)からの乗客は通勤特快へといったように遠近分離をする為に低速で駅を通過し、混雑の分散を図っています。

これは特定の列車が極端に混雑しないように乗客の流れを誘導し、乗降時間の拡大による遅延を最小限にとどめる為の措置であるといえます。

 

このように中央快速線は朝夕ラッシュの輸送力確保の為の工夫や設備が整備されています。しかしそれでも抜本的な解決には至っておらず、ラッシュ時の需要の多さに驚かされます。

今後は少子高齢化によりどの路線も輸送人員の低下が予想されており、JR東日本がどこまで混雑緩和に向けた動きを見せるのかが注目どころではないでしょうか。