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特急「富士回遊」の運転開始の狙い

2019年3月16日、JR東日本新宿駅から富士急行線河口湖駅までを結ぶ特急「富士回遊」の運行を開始しました。

それ以前は土休日を中心に、ホリデー快速富士山」という快速電車を同区間で運転していましたが、富士山周辺の観光需要が外国人観光客を中心にここ数年で大きくなり、特急列車を設定したと思われます。特急富士回遊の運行開始により、平日を含め1日2往復の列車が新宿駅河口湖駅を結んでいます。

富士回遊が運行開始したことで、途中駅での乗り換えが不要となり、同区間の所要時間は約30分短縮されるなど、利便性が向上しています。

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JR東日本が導入した新型特急車両「E353系」を用いて運転されている ※画像:JR東日本

 ①使用車両と停車駅

使用車両はJR東日本が中央線特急の「あずさ」、「かいじ」用に導入したE353系が使用されています(繁忙期などに運転される列車にはE257系が充当されるケースもある)。富士回遊は基本的にJR東日本の中央線内(新宿駅大月駅間)は特急かいじと併結運転を行い、大月駅で切り離し作業を行い、かいじはそのまま甲府方面へ、富士回遊は富士急行線へ直通し河口湖を目指します。列車の編成は12両で、そのうち9両がかいじ、残りの3両が富士回遊という構成です。富士回遊は3両と比較的短編成ですが、富士急行線内はホームの有効長が短いので、これ以上長編成化出来ないといった背景もあります。

 

富士回遊の停車駅は中央線内は特急かいじと同様の停車駅で、多摩地域の中心都市である立川駅八王子駅に停車していきます。そして列車は山梨県に入り、大月駅にて特急かいじと切り離され、富士急行線へ乗り入れます。富士急行線内は都留文科大学前駅に停車し、その後は富士山の玄関口である富士山駅富士急ハイランドが目の前にある富士急ハイランド駅、終点河口湖駅の順に停車していきます。

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JR東日本有数のターミナル駅新宿と富士山の麓とを結ぶ特急らしい停車駅が並ぶ ※画像:富士急行電鉄

所要時間は従来より30分程短い、約1時間50分となり、従来は途中の大月駅で乗り換えが必要でしたが、富士回遊を利用すると乗り換えなしで富士山、河口湖駅まで向かうことが可能になりました。

乗り換えが不要で停車駅が少ない当列車は外国人観光客を中心に人気があるようです。これは旅行の荷物等が多い観光客からすると、乗り換えが不要だと荷物の持ち運び等の手間が少なくなるなどのメリットもあるからだと思います。

 ②運行ダイヤ

富士回遊は富士山方面の観光需要に対応した列車である為、下り列車は新宿駅を8,9時台に出発し、上り列車は河口湖駅を15,17時台に出発するダイヤが組まれています。これにより富士山方面の日帰り観光需要に対応したダイヤとなっていると言えます。

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観光利用をメインとした特急である為、下りは午前中、上りは夕方に運転するダイヤである ※画像:JR東日本

③運賃と特急料金

 富士回遊は全車指定席の特急列車です。また中央線の特急あずさ、かいじも最近全車指定席の特急になり、自由席は廃止されました。

特急券は乗車前に購入するのが基本で、もし車内で特急券を購入する場合は追加料金として260円(小児は130円)が上乗せされます。主な区間の運賃と特急料金の合計額は、

・新宿~河口湖間 4,060円 (2,460円+1,600円)

・立川~河口湖間 3,710円 (2,110円+1,600円)

・八王子~河口湖間 3,250円 (1,900円+1,350円)

となっており、普通列車で行くより1,500円程料金は高くなりますが、所要時間の短縮と居住性の高さがある為、快適な旅を送ることが出来ると思います。

 

④富士回遊の見どころ

富士回遊は都心の新宿駅を起点に富士山の麓である富士急行線に乗り入れていきます。その為、新宿駅高尾駅までは都心のビル街や住宅地の間を走り抜けていきますが、高尾から先の「中央本線」と呼ばれている区間では車窓が一変して緑豊かな山々を見ることが出来ます。

大月から先の富士急行線内は制限速度が最高でも70km/h、場所によってはさらに制限がきついところもあり、駅の前後では減速しながら通過するなど、比較的ゆっくりとした車窓を楽しむことが出来ます。だんだんと富士山の麓へ列車が走っていくので、間近に迫りくる富士山を堪能できる列車です。

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富士山をバックに颯爽と走り抜ける富士回遊 春は沿線の桜も綺麗に咲き誇る

 

2020年に東京オリンピック開催を控え、訪日外国人観光客は年々増加の一途を辿っています。中でも富士山は、京都や大阪などと同じくらい人気のあるエリアです。今までは直通列車が少なかった(通勤型のE233系が各駅停車で乗り入れていたが主に通勤利用向け)のですが、今回の富士回遊の運行開始により今まで以上に富士山方面へのアクセスがしやすくなりました。今後も富士山方面の観光需要は続くと思いますので、富士回遊の更なる発展を期待しています。