北海道新幹線の是非について考える(上)では北海道新幹線の現状の課題について考察してみました。
今回は、北海道新幹線が全線開通した際の今後の展望と問題の解決策について中、下編の2回に分けて考察していきたいと思います。
北海道新幹線が全線開通したら・・・道内編
まずはじめに、北海道新幹線が札幌まで延伸し全線開通したら北海道内の鉄道網はどうなるのか考察していきたいと思います。
整備新幹線が開業することに伴い、それまでの旅客が新幹線利用に移り変わることによって旅客輸送量が著しく低下する線区を並行在来線と呼びます。この並行在来線は第三セクター化(主に地方自治体と民間企業が共同出資することにより設立された事業体のことを指す)され運営が継続されることになります。
新幹線開通前は在来線の特急列車や第三セクターの路線を利用して向かうのが一般的だった場所に新幹線が開通すると、利用者の多くが新幹線へと流れます。これは、
・東京から乗り換えせずに目的地に着く
・所要時間の短縮により、目的地に早く到着できる
といった利点があるからです。
そうするとこれまで利用されてきた在来線の特急列車や第三セクターの需要が大きく低下し不採算路線となってしまう傾向にあります。
最近の例をあげると、北陸新幹線開業に伴い、北越急行ほくほく線の看板列車であった特急はくたか号が廃止され、運行を行ってきた北越急行の経営状態は大変厳しいものになりました(北越急行は第三セクターとしては珍しく経営が順調であったがその収益の9割は特急はくたか号によるものであった)。
JR北海道の在来線は札幌圏を含め全線で営業係数(100円の利益を上げるのにいくらかかるかを数値化したもの)が100を超える赤字経営になっており、場所によっては100円の利益を得るのに1000円以上かかる線区もあります。また北海道は積雪が多く、除雪費用や線路の保守に莫大な費用がかかる為、これらが更にJR北海道の経営を厳しいものにしております。
また北海道新幹線の延伸区間(下図参照)に並走する在来線は旅客輸送量が低い線区が大半であり、その大部分が第三セクター化されるといわれています。
すでに開業している区間に並行している木古内~函館駅間(厳密には五稜郭駅まで)はJR北海道の江差線という路線でしたが、新幹線開業に伴い木古内~江差間は廃止、残りの区間は第三セクター化され、「道南いさりび鉄道」として再スタートを切りました。
北海道新幹線の新函館北斗~札幌の延伸開業後は同様の措置が並行在来線に行われ、同時にJR北海道の看板特急の一つであるスーパー北斗号の廃止もしくは区間短縮(長万部~函館駅間廃止)が実施されると考えています。
第三セクター化されると推定される区間は、新函館北斗(もしくは函館)~長万部、長万部~小樽までの函館線の大部分です。この区間は利用者数が少ない区間で函館~長万部駅間には特急スーパー北斗号が走っているものの普通列車は多くありません。また山線区間と呼ばれる長万部~小樽駅間は特急列車の運行が海線(洞爺湖、苫小牧経由)に変更されてからローカル線区となりました。この区間は峠が多く、利用者も多くはないことからJR北海道の経営から切り離され第三セクター化するでしょう。
その一方、小樽~札幌駅間は札幌への通勤通学需要があるなど、比較的利用客数が見込める区間であり、札幌からの直通列車も設定されていることからこの区間は引き続きJR北海道が運行していくのではないかと考えています。
札幌~函館間の移動需要は道内での中でも大きく、現在も在来線の特急スーパー北斗号が約12往復(1時間に1本程度)運転されていますし、高速バスの運行もあります。
所要時間は鉄道が約3時間45分、バスが約5時間30分となっており、現時点でもバスと比較すると鉄道を利用した方が早く到着出来ます。この区間に新幹線が開通すると主要時間は約1時間となります。これは航空機に匹敵する速さ(函館~丘珠空港間は40分程度)であり、搭乗手続きなどの時間を考慮するとかなり有利であると推測できます。
北海道新幹線は東京と札幌間の輸送ももちろん考えていると思いますが、それ以外の区間利用をどれだけ伸ばせるかが大きなカギであると考えていますので、シャトル便の設定を検討していただきたいと思います。
これまでの輸送力でも約1時間に1本程度の特急列車が走っていたことと、所要時間の短縮でバスや航空機からのシェアを奪うことで輸送人員が増えると思いますので、1時間に1~2本(1時間に2本ある時間帯は1本は東京まで直通させる)程度運行できると運行頻度の面でも優位に立つことができ、パワーバランスに大きな変化をもたらすと思います。
このように北海道新幹線が札幌まで延伸すると新函館北斗駅開業の時よりも大きな効果が生まれることは間違いありません。
次回は北海道新幹線が全線開通したら・・・対首都圏編として考察させていただきたいと思います。
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